こんにちは。スタートアップ東京です。
スタートアップ支援を専門とする公認会計士・税理士として、私たちは定期的に新規上場企業の公開資料を読み解き、その裏にある「投資家を熱狂させた物語(エクイティ・ストーリー)」を分析していきます。
第2回目は、2025年12月に東証グロース市場へ上場した株式会社FUNDINNO(証券コード:462A)です。
日本初の株式投資型クラウドファンディングとして2017年にサービスを開始し、上場日には公開価格620円を42.4%上回る初値883円をつけたFUNDINNO。
その躍進の背景にあるのは、「未上場スタートアップへの投資は、一部の富裕層やVCだけのもの」という、日本の金融常識への静かな問いかけでした。
なぜFUNDINNOは、投資家から高い評価を受けたのか。
その答えは、「誰もが挑戦できる金融インフラをつくる」という、ただ一つのビジョンにあります。
VCだけの特権から、個人の権利へ。
日本のリスクマネーを民主化する。」
優れたエクイティ・ストーリーには、たった一つの「ビッグ・アイデア」が必要です。
FUNDINNOの場合、それは「市場への参加権そのものを再定義すること」でした。
未上場株式投資を「一部の人間だけのもの」から「誰でも挑戦できるもの」へ。
その発想の転換が、投資家の目線を根本から変えたのです。
1. 共感を生む「エクイティ・ストーリー」
投資家は論理で納得し、感情で決断します。
だから優れたエクイティ・ストーリーは、必ず「原点の問い」から始まります。
FUNDINNOの場合、その問いは日本の金融構造の矛盾をついていました。
「なぜ、有望なスタートアップへの投資は、
VCだけに許されているのか。」
── 株式投資型クラウドファンディング解禁(2015年)を受け、FUNDINNOが問い続けてきた問い。
日本では長らく、未上場スタートアップへの株式投資は、VC・エンジェル投資家・一部の富裕層だけに許された世界でした。一般の個人投資家がどれほど「このスタートアップを応援したい」と思っても、上場するまで株を買う手段は存在しなかったのです。
その壁に対して、FUNDINNOは一つの答えを出しました。「1口10万円から、個人が未上場スタートアップに株主として投資できる」仕組みの構築です。
スタートアップへの投資機会を、一部の人だけでなく、
あらゆる人へ開放する。
資金調達の手段を、特定の投資家だけでなく、
すべての起業家に届ける。
未上場株式という資産クラスを、日本の新たな金融インフラにする。
これは単なるサービスの説明ではありません。「金融の民主化」という、社会変革のビジョンです。
日本のスタートアップ支援は「岸田政権の5カ年計画」以降、国家戦略として位置付けられています。FUNDINNOはその流れに先んじ、2017年のサービス開始から7年で、国内の株式投資型クラウドファンディング市場においてシェアNo.1の地位を確立しました。
このミッションに触れた投資家は、FUNDINNOを「クラウドファンディング会社」ではなく、「日本のスタートアップエコシステムを変える金融インフラ企業」として評価したはずです。
そして、このミッションは言葉に留まりませんでした。
数字が、その証明をしています。
(2025年5月時点)
(2026年10月期Q1)
(2025年10月期)
支援件数
累計成約額200億円は、7年間で個人投資家が未上場スタートアップに投じた総額です。「クラウドファンディングは趣味の資金調達」という偏見を覆す数字であり、本物の金融機能がここに存在することを示しています。
特定投資家数が1年強で337名→1,746名へと約5倍に拡大したのは、プロ投資家からの「承認」を意味します。
2. 記憶に残る「成長戦略」
感情で共感を得た後は、論理で「勝ち筋」を示す番です。
FUNDINNOの成長戦略が秀逸なのは、「先行者優位の堅牢さ」を土台に、「逆風をチャンスに変える語り方」と「エコシステム完成形の設計図」を重ねた点にあります。
① 日本初・8年分の「先行者優位」という最大の堀
FUNDINNOが競合に対して持つ最大の武器は、技術でも資金力でもありません。「時間」です。
2017年に国内で初めてサービスを開始したFUNDINNOは、後発のユニコーンやイークラウドとは8年分の差を持っています。この差は単なる「歴史」ではなく、複利で積み上がった構造的な優位性です。
先行者優位が生む「3つの堀」
✔ 投資家データの蓄積:累計15万人のユーザー基盤と投資行動データは、後発が数年で追いつけるものではない
✔ ブランドと信頼:「株式投資型クラウドファンディング=FUNDINNO」という市場認知は、起業家が資金調達先を選ぶ際の最初の選択肢になり続けることを意味する
✔ 成功事例の厚み:650件超の調達支援と複数のIPOイグジット実績が、新たなスタートアップを引き寄せるネットワーク効果を生んでいる
プラットフォームビジネスの本質は「鶏と卵」です。投資家が多いから良い案件が集まり、良い案件があるから投資家が増える。この好循環を最初に回し始めた者が、市場を支配しやすい。FUNDINNOはその地位を、8年かけて盤石なものにしました。
② 「IPO件数低下はチャンス」という逆張りのポジショニング
一般的な投資家は、「IPO市場の低迷=スタートアップ投資には逆風」と考えます。しかし、FUNDINNOはこの常識を逆手に取りました。
FUNDINNOの逆説的ロジック
IPO件数が少ない → 上場以外のEXITニーズが高まる
上場が難しい環境 → 未上場のまま資金調達し続けるニーズが拡大
結論:IPOが減れば減るほど、FUNDINNO の出番が増える。
さらに、2025年2月施行の改正金融商品取引法が、FUNDINNOに決定的な追い風をもたらしました。1案件あたりの資金調達上限が「1億円未満」から「5億円未満」に拡大されたのです。これにより、これまでFUNDINNOが届かなかった「中間ステージのスタートアップ」が新たなターゲット層として加わりました。
この規制変化は偶然ではありません。日本政府の「スタートアップ育成5カ年計画」が民間の資金調達インフラ整備を後押しする中、FUNDINNOは規制の方向性と事業方向性が完全に一致する希少な企業として投資家に映りました。
② プライマリー→グロース→セカンダリーという「エコシステムの完成形」
投資家が最も期待する「アップサイド(上振れ余地)」は、プラットフォームの拡張性です。
ここでFUNDINNOが提示した戦略は、単なる「調達件数の増加」ではありませんでした。
注目すべきは、3つのドメインによるエコシステム設計です。
- プライマリー領域:スタートアップへの資金供給。FUNDINNO(個人向け・1口10万円〜)とFUNDINNO PLUS+(特定投資家向け・上限なし)の2層構造で、アーリーから中後期まで幅広いステージを網羅。
- グロース領域:資金調達後のスタートアップへの経営支援・成長支援。調達して終わりにしないことで、投資家の「応援する意義」を高める。
- セカンダリー領域:未上場株式の売買市場「FUNDINNO MARKET」の運営。投資家が未上場のまま株を売買できる仕組みを日本で初めて構築。
この三層構造が意味することは一つです。スタートアップが誕生してから、成長し、資金を循環させるまでの全工程を、FUNDINNOが担うということ。これは単なる「資金調達ツール」ではなく、未上場市場全体のインフラになるというビジョンです。
営業収益:3,892百万円(2025年10月期、前年比+54.8%)
経常利益:1,131百万円(2025年10月期、前年比+553.6%)
公開価格PER:高成長期待を反映した評価
初値騰落率:+42.4%(公開価格620円→初値883円)
セカンダリー領域は現状、営業収益全体の1.7%(2024年10月期)に過ぎません。しかし、ここにこそFUNDINNOの最大のアップサイドが眠っています。未上場株式のセカンダリー市場が本格的に育つとき、そのプラットフォームを握るFUNDINNOの価値は、現在の想定を大きく超える可能性があります。
【起業家への問い】あなたの「One Big Idea」は何か?
FUNDINNOの事例が教えてくれることは、一つです。
投資家が買うのは、今の業績ではなく、「未来の物語」です。
FUNDINNOが手がけているのは、ただのウェブサービスではありません。「日本のリスクマネーを民主化する」という社会的命題です。その命題に、数字と制度改革という「証拠」が重なったとき、投資家は初値で42.4%のプレミアムを支払いました。
いまから、会社設立をして、資金調達や上場を目指す起業家の皆さま。
あなたの事業は、一言で語れる「社会への問いかけ」になっていますか?
その問いに答えることが、最も強力なエクイティストーリー(equity story)の出発点です。
その「物語」を、一緒に作りませんか?
スタートアップ東京は、スタートアップ専門の会社設立サービスです。会社設立を資本政策のスタートとして捉え、IR活動も支援。
まずは無料相談で、あなたのビジョンをお聞かせください。スタートアップ支援実績が豊富な公認会計士・税理士がお話をお伺いします。
原田 潤(Jun Harada)
公認会計士・税理士。監査法人にてIPO支援、野村證券企業情報部にてM&Aアドバイザリー、ヤフー・ライブドアにて経営企画・M&A業務に従事後、シェアリングエコノミー領域で起業。現在は神宮前あおば税理士法人で、持続可能な企業価値向上をテーマに、スタートアップ企業を支援。上場会社の社外役員を歴任。