新規上場会社のエクイティストーリー【SQUEEZE 558A】| スタートアップ支援専門公認会計士・税理士

こんにちは。スタートアップ東京です。

スタートアップ支援を専門とする公認会計士・税理士として、私たちは定期的に新規上場企業の公開資料を読み解き、その裏にある「投資家を熱狂させた物語(エクイティ・ストーリー)」を分析していきます。

第4回目は、2026年4月22日に東証グロース市場へ上場したSQUEEZE株式会社(証券コード:558A)です。

AI×ホテル運営という領域で、SaaSからオペレーション受託まで一気通貫で展開するSQUEEZE。公開価格3,110円に対し初値は3,250円(初値騰落率+4.5%)と地味な滑り出しでしたが、その後も株価は上昇を続け、上場から約5週間で4,400円超へ。「本当のIPO評価」は、初値ではなく、上場後の株価が語るものです。

なぜSQUEEZEは、上場後も株価が上がり続けているのか。
その答えは、「ホテルを建てた。でも、誰が動かすのか。」という、一つのシンプルな問いにあります。

SQUEEZE’S “ONE BIG IDEA”

「ホテルを建てた。でも、誰が動かすのか。」

人手不足の時代でも、テクノロジーとBPOで
スマートかつ高利益率のホテル運営を実現する。

優れたエクイティ・ストーリーには、たった一つの「ビッグ・アイデア」が必要です。SQUEEZEの場合、それは「人手不足でも、ホテルをスマートに動かせる」という一点に尽きます。

ホテルや旅館の運営形態として、MC(マネジメントコントラクト)方式があります。施設のオーナーが外部の運営会社に運営を委託するこの方式では、問題は「誰に運営を任せるか」ではなく、「その運営会社自体が人を集められない」という現実にあります。SQUEEZEはその問いに、AIとテクノロジーで正面から答えた会社です。

1. 共感を生む「エクイティ・ストーリー」

投資家は論理で納得し、感情で決断します。
だから優れたエクイティ・ストーリーは、必ず「原点の問い」から始まります。

SQUEEZEの場合、その問いは不動産オーナーやデベロッパーなら誰もが直面したことのある、あの場面から始まっています。

「運営会社に頼みたい。
でも、その運営会社自体が、人を集められない。」

── インバウンド需要が爆発する中、宿泊業界全体が直面している矛盾。

訪日外国人数は2025年に過去最高を更新し、ホテルへの投資意欲はかつてないほど高まっています。しかし現場では、深刻な人手不足が続いています。宿泊・飲食サービス業の離職率は25.6%と全産業平均を大きく上回り、フロントスタッフや清掃スタッフの確保は業界全体の喫緊の課題です。

需要はある。投資する意欲もある。しかし「動かせる人がいない」——この矛盾が、「今」SQUEEZEに追い風をもたらしている理由でもあります。不動産デベロッパーや鉄道・商業施設事業者が、本業の強みを活かして施設を開発しながら、運営は専門会社にアウトソースする分業モデルが一気に定着し始めました。さらに、かつてはツールをばらばらに使っていたり熟練スタッフが担っていた業務が、統合ソフトウェアで代替可能になっています。インバウンド拡大・外注化の潮流・AI実用化——この三つが重なったまさに「今」が、SQUEEZEの勝ち筋です。

この「ホテル運営のノウハウが十分なくても、BPOでホテルを運営できる」という価値は、すでに実績として証明されています。

実際の導入パートナー(公表事例)

📌 JR東日本グループ「ホテルB4T」——Suicaがルームキーになるスマートホテルのシステムを開発・導入

📌 エスコン(北広島)——日本ハムボールパーク直結158室ホテルの企画・運営

📌 霞ヶ関キャピタル——ライフスタイルホテル「FAV」シリーズへの導入

📌 STATION Ai(名古屋)——スタートアップ支援拠点の最上階スマートホテルの運営

📌 ホテルウィングインターナショナル——37施設への一括導入でDX推進

JR東日本、不動産デベロッパー、スポーツ・エンターテイメント施設——業態も規模もまったく異なるプレイヤーが、同じSQUEEZEを選んでいます。エスコンフィールドは球場運営のプロであり、霞ヶ関キャピタルは不動産開発とファンドマネジメントのプロです。彼らがそれぞれの本業に専念しながらホテル事業を成立させられるのは、SQUEEZEというパートナーがいるからです。

そして、このミッションは言葉に留まりませんでした。数字が、その証明をしています。

Source: 有価証券届出書、同社プロジェクト事例

3.1倍
GMV(総取扱高)前期比
649億円(2025年12月期)
2.4倍
管理客室数(RUM)前期比
2.14万室(2025年12月期)
90%超
リカーリング比率
安定したストック収益が積み上がる構造

2. 記憶に残る「成長戦略」

感情で共感を得た後は、論理で「勝ち筋」を示す番です。
SQUEEZEの成長戦略が秀逸なのは、「BPaaSという収益構造」を土台に、「GOPマージンという実績値」と「TAM普及率1.2%という成長余地」を重ねた点にあります。

BPaaSのストック構造——リカーリング90%超の安定基盤

SQUEEZEのビジネスモデルを理解するうえで、最重要キーワードが「BPaaS(Business Process as a Service)」です。一般的なSaaS企業は「システムを提供し、使い方は顧客に任せる」モデルです。SQUEEZEは違います。自社開発のクラウド宿泊管理システム「suitebook」を提供しながら、その上で実際の運営業務まで一体で担う——これがBPaaSです。

SQUEEZEの3層ビジネスモデル

① SaaS領域——suitebook

予約管理・顧客管理・AI価格最適化・チェックイン自動化など、ホテル運営に必要な機能をクラウドで一元提供。リカーリング型の継続課金モデル。

② クラウドオペレーション領域——遠隔運営

suitebookと連動し、遠隔でのゲスト対応・収益管理・需要予測を提供。複数施設を横断して少人数のオペレーターが運営できる仕組みを実現。

③ オンサイトオペレーション領域——現地運営

清掃・設備管理・現地フロント対応を含む現地運営を受託。マネジメント・コントラクト(MC)やマスターリース(ML)など施設ごとに柔軟な契約形態に対応。

投資家がBPaaSを高く評価する理由は二つあります。一つは、リカーリング(継続収益)のストック構造です。施設が稼働し続ける限り、システム利用料・運営委託費が毎月積み上がります。もう一つは、スイッチングコストの高さです。システムと運営が一体で入っている場合、切り替えはホテル運営の全体設計を変えることに等しく、現実的には解約が起きにくい構造です。この二つが組み合わさることで、「拡大するほど安定する」収益基盤が生まれています。

GOPマージン70%超——「SQUEEZEを入れると儲かる」という証明

GOP(客室粗利益)マージンとは、ホテルの売上から直接的な運営コストを差し引いた利益率です。SQUEEZEが運営を担った施設でGOPマージン70%超を実現しているという事実は、「SQUEEZEを入れると儲かる」という明確な証明です。

施設オーナーが長期的にSQUEEZEを選び続ける理由は、スイッチングコストではなく、結果として出ている利益にあります。「解約できない」のではなく、「解約する必要がない」——この違いが、SQUEEZEの収益の質を高めています。エスコンフィールドは球場運営のプロであり続けながら、ボールパーク隣接ホテルを高利益率で運営できる。それを可能にしているのが、SQUEEZEです。

TAM普及率1.2%——「まだ始まったばかり」という余白

投資家が最も期待する「アップサイド(上振れ余地)」は、市場の大きさです。国内のホテル・旅館の総客室数は約182万室。SQUEEZEの現在の管理客室数は約2.1万室で、普及率はまだ約1.2%にすぎません。「まだ始まったばかり」という余白の大きさが、投資家の期待を支えています。

加えて、suitebookを通じてゲストの行動データ・需要パターン・価格感応度が施設を横断して蓄積されています。現時点では運営効率化に活用されていますが、将来的には宿泊データを活用した経営分析サービスや観光プラットフォームへの展開という「第二の収益柱」になり得ます。上場時点では織り込まれていない、将来のアップサイドです。

【財務ハイライト】

売上高:53.6億円(2025年12月期、前期比+74.9%)

経常利益:5.3億円(前期比+147.4%、経常利益率9.8%)

初値騰落率:+4.5%(公開価格3,110円→初値3,250円)

上場後株価:4,400円超(上場から約5週間、公開価格比+41%超)

2026年12月期予想売上高:70.3億円(前期比+31.0%)

DATA SOURCES

・有価証券届出書(株式会社SQUEEZE、2026年3月24日提出)

・同社IR資料(squeeze-inc.co.jp)

・観光庁「宿泊旅行統計調査」(客室数182万室)

・訪日外国人消費動向調査(観光庁、2025年)

※本記事は公開情報に基づく分析であり、投資を推奨するものではありません。

【起業家への問い】
あなたの「One Big Idea」は何か?

SQUEEZEの事例が教えてくれることは、一つです。

投資家が買うのは、今の業績ではなく、「未来の物語」です。

SQUEEZEが手がけているのは、ただのホテル管理ソフトではありません。「人手不足の時代でも、ホテルをスマートに動かし続ける」という社会的命題です。その命題に、GOPマージン70%超・リカーリング90%超・TAM普及率1.2%という「証拠」が重なったとき、投資家は上場後も株価を継続的に評価し続けました。

いまから、会社設立をして、資金調達や上場を目指す起業家の皆さま。
あなたの事業は、一言で語れる「社会への問いかけ」になっていますか?
その問いに答えることが、最も強力なエクイティストーリー(equity story)の出発点です。

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原田 潤(Jun Harada)

公認会計士・税理士。監査法人にてIPO支援、野村證券企業情報部にてM&Aアドバイザリー、ヤフー・ライブドアにて経営企画・M&A業務に従事後、シェアリングエコノミー領域で起業。現在は神宮前あおば税理士法人で、持続可能な企業価値向上をテーマに、スタートアップ企業を支援。上場会社の社外役員を歴任。